赤外線デジタルカメラの改造と、ピントの問題

デジタルカメラを赤外線写真用に改造する際、取り外したローパスフィルタの代わりに、ピント補正用の透明樹脂板をいれるということを度々書いてきました。なぜ、ピント補正が必要になるのか。今回はその光学的な理由について述べます。

ローパスフィルタは、ピント調整の役割を担っている

ご存じの通り、光はレンズによって屈折させられ、CCDなどの撮影素子に到達します。ローパスフィルタは平面なので、レンズと違いピントに関係あるのかと疑問を持つ方もいるでしょう(私もそうでした)。しかし、これまでの改造ではほぼ例外なくピント調整に影響が出ました。

下の写真は、オリンパスのデジタルカメラ CAMEDIA C-2040 からローパスフィルタを外し、代わりに赤外フィルタ(SC70)をいれただけのもので撮影しました。

ローパスフィルタを外した C-2040 で撮影 絞り=F1.8 シャッタースピード 1/125秒 だとピントがまったく合わない
ローパスフィルタを外し、厚み補正をしない状態で赤外撮影
絞り=F1.8 シャッタースピード 1/125秒

あまりにも像のピントが合いません。わたしは、カメラを絞り優先モードにして F10 にセットし、合焦深度が広くなる(ピントが合いやすくなる)ようにして撮影しましたが、それでも、写真はこの程度にしかなりませんでした。

絞り値を上げて合焦深度を深くしても、ピントは合わない
絞りをあげても、多少マシになる程度
絞り=F10 シャッタースピード 1/4秒

なぜ、このような事がおきるのでしょう。

平面のフィルタでも、光の入射角と出射角は変化する

220px-Light_dispersion_of_a_mercury-vapor_lamp_with_a_flint_glass_prism_IPNr°0125小学校の頃に、太陽光をプリズムで分光すると虹色の光が出てくる、という実験をしたことがあると思います。あの実験は、白色光が様々な光の集まりであることと、屈折率が違う物体──この場合は空気とガラス──の境界面で、光の方向が変わることを示しています。

プリズムと同じように、平面のローパスフィルターも、レンズから送られてくる光を屈折させます。これにより、CCDでピントが合うように調整されていたのです。

ローパスフィルタを除去したカメラは「近眼」になる

ローパスフィルタを除去すると、光線の向きが変わってしまいます。すると、ピントの位置(結像点)が撮影素子よりも前方に移動してしまうのです。

ローパスフィルタがないと、デジタルカメラは「近視」になります

これは、人間の近視とほぼ同じ状態です。遠方にある像はピントを合わせづらく、近くにあるものはよく見えるのです。実際に、このピントがずれた C-2040 で、近くにあるものを撮影してみましょう。

改造したC-2040で撮影した赤外線写真。近くにあるものなら、ピントが合う。人間の近視と同じ状態
近くにあるものなら、ピントが合う。人間の近視と同じ状態
絞り=F4.0 シャッタースピード 1/400秒

遠くの木々に比べて、手前にあるシロツメクサはとてもシャープに写っています。人間の近眼とよく似た状態なのが見て取れます。

どのぐらいズレるのか?

私はローパスフィルタの材質が何なのかよくわかりませんが、音からいって、何かしらのガラスではないかと考えています。レンズなどに使われるガラスは、鉛の含有量によって屈折率が変わります。今回は屈折率 1.7 のフリントガラスだと仮定して計算してみましょう。

先に挙げた図では、ローパスフィルターへの光の入射角を仮に 20° として描いています。
屈折率 1 の空気中から入射角 20° の光が 屈折率 1.7 のローパスフィルタに入ると、スネルの法則により

1 × sin20° = 1.7 × sin X

が成り立ちます。sin20° を 0.342 とすると、sin X は 0.201 で、およそ11.6° ということになります(下図)。

空気中から屈折率1.7のガラスに入った、入射角20°の光線は、内部で11.6°に変化します空気とローパスフィルタの境界面で、角度が 11.6° に変化した光線は、再び空気中に出て行くときに20°に戻ります。ローパスフィルタがなくなると、そのぶんだけ結像点は前にずれる、というわけです。

この結像点のズレを解消するには、CCDとレンズの隙間を短くするか、もしくはピント補正用の板をいれるしかありません。前者は物理的にムリがあるので、後者を選択します。

つまり、ピント補正の為に透明な板を入れるわけです。
その効果については、後日ふれることにしましょう。

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