演劇

メイドのみやげ(ナシカ座/作・演出:内田好政

★★☆☆☆(前売り3,000円)

第4回公演の本作、席は8割弱も埋まってた。ちょっと驚いたのは、アンケートに住所やメールアドレスを書く欄が無い事。DMによる宣伝は、はなから考えてないってこと? そこに新時代をみちゃったよ。

内容は……メイドカフェを経営する女の子の「細腕繁盛記」。チェーン展開するライバル店にお客もスタッフをもとられ、常連客なんて4〜5人くらいの青息吐息の経営状況。経営者の死んだ元恋人が、地縛霊として憑いてる大島てる物件のこの店に、ライバル店からの買収話や借金の返済期限が迫る──さーてどうする?……といったもの。

評価したいのは、上演時間を100分に納めた事。つまんないお芝居って、観客にとって心底どうでも良い要素を詰め込んで、120〜150分とかの長丁場にしてしまうからね。

で、肝心のお芝居はというと「ハートフルコメディ」と名乗る割には、全然ハートフルでもないし、ましてやコメディ要素なんてどこにもない。少なくとも舞台にはコメディアン/コメディエンヌは一人も居なかった。最初から最後まで、クスリとも笑えない。いや、ギャグらしきものは散見できたんだよ。それがコメディとして昇華されていない。コメディを展開するチャンスは何度もあったのに、だ。
執拗に買収攻勢をかけてくる、メイドチェーンの店長だって、「メイド喫茶文化を一過性のブームで終わらせたくない」という底に秘めた熱い魂があるなら、初来店した際のあの嫌味ったらしいセリフなんて言わないだろう(純粋に社会人として失格な物言いだ)。

他の登場人物も、心情の移り変わりが丁寧にえがかれておらず、本作のドラマ性が極めて薄くなっている要因と言える。

ようするに、内田好政が書いた脚本が、心情の表現にうとく、取材不足でかつ穴だらけなのだ。100万円を120万円にして返せ、さもなくば俺の女になれ…というセリフ、言った時点で公序良俗に反してその借金は無効になる事もありうるし、利息制限法いっぱいの利子を取る街金やサラ金から借りるくらいなら、誰か店長に金融公庫、商工会議所や日掛け金融などを紹介するとか、有っても良かったのではないか──? などと思ってるうちにお芝居が終わっていくのだ。
演出についても、描く人物を戯画化しすぎ(テレビアニメの影響が見られる)、大声出させすぎの感がある。あれではせっかく熱演していた役者の良さを削ぎ取ってしまいそう。

舞台美術と照明は良かった。

この公演、前売り3,000円、当日 3,500円…… 初期の「ギンギラ太陽’s」や現在の「万能グローブガラパゴスダイナモス」と同じ値段である。これらと比べると、★★程度しかつけられない。

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